デベの民泊立ち上げ支援 住宅に高い付加価値を

(株)Unito
代表取締役CEO 近藤佑太朗 氏

近藤佑太朗氏

 (株)Unito(ユニット)は、不動産デベロッパー向けの民泊ブランド支援サービスを開始した。これまで同社は大手不動産などと協業し、賃貸住宅の入居者が部屋を民泊として貸し出すことで賃料を下げるとともに、建物オーナーの収益性を上げるサービス「リレント」を展開。このサービスを活用して、不動産デベロッパーの自社ブランド立ち上げから運営、集客までを包括的に手がける新サービス「unito OS(ユニット・オーエス)」を3月に公開した。同社のビジネスと今後の展開などを、代表取締役CEO・近藤佑太朗氏に聞いた。

賃料と宿泊料で収益増

 ──まずは、リレントの概要やターゲットなどを教えてください。

 近藤 当社は家賃のイノベーションを起こして、固定費だった家賃を変動費に変えています。「住んだ分だけの家賃でいい」という変動制の家賃システムになります。

 2020年のサービス開始以来、30年先の暮らし方はより多様化していくはずだと考えてきました。暮らし方の多様化の前に、働き方が多様化しましたね。働き方の多様化はどういうことかというと、オフィスがより小口化、コワーキング化していったということです。オフィスはこれまで月~金でずっと来るべき場所でしたが、コワーキングでいろいろなプランが出てきました。たとえば、18時以降使えるプランもあれば10時~18時の平日のメインプランもあれば、土日しか使えないプランもあります。これは、利用ユーザーのターゲッティングで絞ってオフィスを小口化し、用途に合わせたプランにできたということです。暮らし方も人々に最適化されたかたちがあるべきと思って、月額賃料だけだったところを日数単位で課金できるというものが、リレントになります。

 仕組みとしてはシンプルで、僕たちが(建物オーナーである)デベロッパーと協力してホテルないしは民泊の許可を取った部屋をつくり、そこに住む人たちを集客します。その住む人たちが出張とか、旅行などで留守にするタイミングで、旅行者にも(その部屋を)貸し出します。このことによって、住む人たちは家賃が下がりますし、(建物の)オーナーとしては、賃料と宿泊料の両方取ることができます。それによって普通の賃貸住宅よりも価値が高まるというモデルになっています。

不動産会社の民泊ブランド組成を支援する(イメージ)
不動産会社の民泊ブランド組成を支援する
(イメージ)

    展開地域としては、家賃水準が高い東京都心がメインのサービスですが、名古屋、大阪、福岡、札幌といった地方都市でもサービスを展開しています。(建物の)オーナーとしては、三井不動産や東急不動産、大阪ガスなどのインフラ系や大手デベロッパーを中心に提携していますが、リートやファンドなどとの協業を増やしている段階です。

 (賃貸の)入居者としては、多拠点居住やアドレスホッパーのような暮らし方をしている人がメインだと思われがちですが、半分くらいはビジネスパーソンです。このビジネスパーソンには2つあって、1つは普段は海外に住んでいて日本にも来るような人、もう1つは大阪に住んでいて毎週、毎月東京に来る半単身赴任のような移動が多い人たちです。

 そのほか25%くらいは、デジタルノマド(ネットやデジタルツールを活用して場所にとらわれない働き方をする人)と呼ばれる人たちで、海外のデジタルノマドが日本にもどんどん来ています。Googleやアマゾン、メルカリのような大手IT企業やメガベンチャーでは、福利厚生の一環として「世界中どこで働いてもいい」という制度があるようです。こうした海外の人は結構日本に来るのですが、1カ月・2カ月借りられる部屋は見つからないので、僕たちの部屋を選んでもらえます。そして、アドレスホッパーやZ世代が結婚前の半同棲で使うなどといった、その他の人たちが25%くらいいます。

 ──Airbnbなど海外のサービスと競合するイメージがありますが、リレントの強みは?

 近藤 Airbnbについては、“競合”してもいますが、“協業”してもいます。どういうことかといいますと、(宿泊の)集客はAirbnbにお願いしています。一般の旅行者に対しては、自社で集客せずにAirbnbと在庫連携をしており、当社の物件に住んでいる人が部屋の貸し出しをすると、Airbnbに情報が出るのです。Airbnbから宿泊ユーザーを集客しているので“協業”していることにもなります。

 一方で、(“競合”という意味では)Airbnbは2~3カ月の間、住もうとしても日によっては空いていないため虫食いになってしまいますし、どのプラットフォームでもぴったりな住む部屋を見つけることができません。そこが僕たちの競合優位性であり、2~3カ月から半年間の短中期滞在で住むような人たちのためのプラットフォームであることが、大きな違いです。

福岡でも民泊支援

近藤佑太朗氏    ──中小不動産などが所有するビルや個人オーナー向けのサービスは?

 近藤 僕たちがオペレーションシステム(unito OS)を提供し、3月から民泊ブランドの立ち上げ支援を行っています。今までは三井不動産など大手デベロッパーなどと協業してきました。大手はいくつも物件をもっているので、協業の難易度は高いですが、協業ができればサービスを広げやすい。さらに、準大手や中堅のデベロッパー、地域の不動産投資家にも広げようとしていて、その一環がオペレーションシステムを提供するということです。こうした企業は、自分たちで(民泊ビジネスを)やっていきたいというニーズが高まってきます。システムの部分と賃貸入居側の集客プラットフォームを提供しますし、場合によってはカスタマーサポートも請け負います。規模が小さくなると、24時間365日のカスタマーサポートが難しくなってきます。

 僕たちはいろいろなパターンの協業方法に対応できるようなったので、(建物)オーナーのニーズに合わせて一部だけをやることもできるし、一括で全部任せてもらうこともできます。さまざまなアセットクラス、さまざまなオーナーの規模感に対応できるようなサービスとして、unito OSを3月にローンチ(公開)したわけです。

 個人といえども、上場企業を創業して数十億円を資産としてもっているような方々が最初は中心になりますね。エリアとしては、どうしても都心になりますが、福岡でも数棟のローンチをしています。建物の規模感としては1棟3億円くらいからですので、個人の場合はそれなりの富裕層の方になってしまいます。

 さらに、自分たちで(民泊を)内製化していきたいというニーズが出てきています。民泊は18年6月から始まって、その後コロナ禍で民泊マーケットができる前に一度終わってしまいました。コロナ禍が明けて23年頃からアフターコロナになって、そこから2年くらい経ち、このタイミングでマーケットができたわけです。大手を含めていろいろなデベロッパーは、民泊マーケットが成立したので、自社で内製化していこうとなっているのです。ですが、(マーケットが成立しても)僕たちがケアしなければならない部分がたくさんあります。カスタマーサポートからシステムの開発まで幅広いですので、いろいろなデベロッパーが自社での内製化をサポートできるようにしたのがunito OSです。

 ──unito OSの反響は?

 近藤 (4月24日時点の)契約は大手で3社、個人の方や新しいオーナー属性の会社も結構います。福岡の地場デベロッパーと協業を始めたり、有名企業の創業者の資産管理会社との契約が決まっていたりします。地域企業や資産管理会社などは一括で任せてもらっていますし、大手では自分たちでできない範囲を僕たちがやっていますが、大手の社内的には内製化というかたちになっています。

 unito OSの競合優位性というところでは、賃貸マーケティングができてシステムをもっていて、カスタマーサポートや自社で内製化している清掃のオペレーションのすべてを自社で抱えている会社は、ほかにないんですよ。もちろん、それぞれについてのプロフェッショナルな会社はありますが、全部1社でやっている会社はないので、それが強みです。一気通貫でも一部でも対応できますので、いろいろなニーズに寄り添って、業界全体の発展に寄与できると考えています。

民泊運営サービス「unito OS」は
「人的リソース・運営システムの導入」「民泊に最適化された空間活用の企画開発」「ブランド構築と集客」の3本柱で構成

5年後には1,000棟に

 ──今後の展開についてのお考えは?

 近藤 民泊マーケット規模が1兆円にいくことが1つの目標で、そこに寄与していきたいですし、そのマーケットで10~15%のシェアを取りたいと思っています。部屋数でいうと、現在120棟くらい運営・管理させていただいていますが、国内の主要都市をメインに今後3年で500棟、5年で1,000棟にしていきたい。また、アジア圏で3年後くらいには現地のオペレーターを買収して参入できればとも考えていますが、海外は参入の難易度が高く、今のところ具体的には検討していません。

 レジデンス(住宅)の高付加価値化は、必要不可欠だと思っています。2050年には日本の人口が1億人を切り、2100年で人口3,000万人になるという試算もあるなかで、レジデンスのマーケットは結構悲観的なんです。足下を見ても、建築コストが上がり金利も上がっていくなかで、仕入れコストが加速度的に増えていて、賃料を上げざるを得ないというのは、オーナー(デベロッパー)側のマスト条件になってきています。ただ、これまでのように家賃をどんどん上げていくのは、本質的ではないと思っています。貧富の差も拡大するし、都心に住めなくなってくる、日本人が住めなくなってくるみたいな世の中になっていきます。

東京・池尻大橋駅から徒歩5分の「大橋会館」内でホテルレジデンスとサウナを運営。渋谷にもほど近くUnito本社オフィスも大橋会館に入居する
東京・池尻大橋駅から
徒歩5分の「大橋会館」内で
ホテルレジデンスとサウナを運営。
渋谷にもほど近くUnito本社オフィスも
大橋会館に入居する

 僕たちのアプローチとしては、レジデンスという“住む”アセットに“泊まる”要素を組み合わせることが日本の不動産の未来というか、解決策の1つだと思っています。単に家賃を上げていくのではなく、また観光立国として優秀だから宿泊施設をただつくるのでもなく、賃貸にもできるし宿泊にもできる、ハイブリッドなアセットをつくることによって、より持続可能なレジデンス・アセットになると思っています。

 それがレジデンスの高付加価値化を叶える未来だと思い、そこに対して僕たちはベットして(賭けて)いきたいとの想いがあります。


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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